眠りのメカニズム

レム睡眠とノンレム睡眠についてや、睡眠中のからだの変化についてなどを紹介。

1.体内時計

ヒトの体内時計と睡眠リズム

私たちは夜になれば眠り、朝になれば目覚めるという一定のリズムを毎日繰り返しています。
この一定のリズムのことを「サーカディアンリズム」といい、この指令を出しているのは脳です。肉体的な疲れはもちろん、脳の疲労回復のために、脳自身が「眠って休め」という指令を送っていると考えられています。
なぜ夜に眠るのでしょうか。それは、私たちの体内には「体内時計」が備わっているためです。この時計は人間だけでなく、全ての生物が持っているものです。かつて生物は海で発生し、潮の満ち引きのリズムにのって生活していました。やがて陸上で生活するようになった生物は、太陽の光を手がかりに活動するようになります。このような太古からの遺伝子が今もなお、からだに組み込まれているため、太陽が昇る昼間に活動し、沈んだ夜には眠るというリズムを繰り返しているのです。

25時間の体内時計

現在、サーカディアンリズ約25時間といわれています。地球の自転が24時間で1回転であるのに対し、なぜヒトの体内時計は25時間であるのか。その決定的理由はまだ明らかになっていません。しかし季節の変化や日照量の変化に適応するためという説が一般的です。
もし、ヒトの体内時計がきっちり24時間だったとしたら、氷河期などの突発的な環境の変化など、不測の事態に対応できなかったかもしれません。1時間のタイムロスのお蔭で今日の人類の繁栄があるといってもいいでしょう。
25時間のままのリズムですと2週間程度で昼夜が逆転してしまう計算になりますが、朝の自然な光がそのズレを調整していることが分かっています。朝の光を15分浴びることで、メラトニンなどの脳内の睡眠誘発物質が消滅し、体内時計がリセットされているのです。

 

2.レム睡眠とノンレム睡眠

私たちが起きたり寝たりというリズムを毎日繰り返しているように、睡眠にもリズムがあります。
睡眠には「ノンレム睡眠」「レム睡眠」という、質の違う二つの眠りがあります。


レム睡眠のREMとは、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)の頭文字をとったもので、1953年、シカゴの大学院生によって発見されました。
レム睡眠は、10~20分程度の短い眠りです。まぶたを通して、目がキョロキョロ動いているのがわかります。このとき筋肉は弛緩し、揺すったぐらいでは起きないほどよく眠っているため「からだの眠り」と言われています。
夢を見るのはレム睡眠のときと言われています。ということはつまり、誰もが毎日、一晩に4~5回、夢を見ていることになります。そんなにたくさん見ているなんて、ちょっと信じられませんよね。それは目覚める直前がレム睡眠だったときに見たもので、それ以前に見た夢は、ノンレム睡眠が訪れるたびに忘れてしまうからなのです。

ノンレム睡眠とは、床に就くとすぐに現れる眠りで、「脳の眠り」とも言われます。一般に深い眠りと解釈され、身体も脳も眠っている状態のことを言います。脳波はゆっくりとした波を描き、その変化によって、眠りの深さは4段階に区分されます。うとうとした眠り→浅い眠り→中くらいの眠り→深い眠りと進んだ後、逆に眠りが浅くなっていき、その後短いレム睡眠があらわれます。ノンレム睡眠は1時間~1時間半ほどかかります。

この二つ眠りが1セットとなって、一晩に4~5回、一定のサイクルで繰り返されています。 質のよい眠りのために必要な「深い眠り」が得られるのは、このセットの1~2回目。3セット目以降は眠りそのものがだんだん浅くなり、目覚めに向かいます。

 

3.年代別睡眠のリズム

睡眠にも年齢があります。生後間もない赤ちゃんは昼も夜も関係なく、1日の大半(16~17時間)を眠って過ごします。このころの特徴は、短いレム睡眠が頻繁にあること。成人のレム睡眠の割合が、睡眠のおよそ20%であるのに対し、赤ちゃんは50%もあるのです。生後4ヶ月ぐらいになると昼間の睡眠が徐々に減り、5歳を過ぎる頃からレム睡眠の割合や、夜に眠るというリズムが大人のものに近づきます。これは、脳を使うことが多くなるにつれ、脳の眠り=ノンレム睡眠が必要になるためだと考えられています。
一方、定年を迎える60歳ぐらいになると、覚醒と睡眠の変化が乏しくなり、乳幼児の睡眠の形に似てきます。睡眠時間が短くなるばかりでなく、深いノンレム睡眠が少なくなって浅いノンレム睡眠が増えてくるため、朝の目覚めが早くなったり、途中で目が覚めたりして睡眠への満足感がなくなってきます。80代では深い睡眠はほとんどなくなってしまいます。

 

4.睡眠中のからだの変化

眠っている間、からだは特有の変化や動きがあります。
さまざまな細胞が活発に動くのも睡眠中です。その代表が成長ホルモン。これが最も活発に分泌するのは夜10時から午前2時ごろで、皮膚の形成や新陳代謝の働きが盛んになるのもこの時間帯です。
「寝る子は育つ」「美人は夜につくられる」というのは、ちゃんとした根拠があっての言葉なのです。また、起床から約14時間後には眠気を促すホルモン「メラトニン」が分泌し始め、寝入る頃に最高値に達します。これは体温や他のホルモンの分泌の調整などに働き、睡眠中の身体機能回復に欠かすことのできないホルモンです。
これに対して目覚めるころ、からだの活動を高めるホルモン「コルチゾール」が上昇してきます。
そのほかにも睡眠中にはさまざまな生理的な変化があり、しかもレム睡眠時とノンレム睡眠時には全く異なる生理状態をみせるのです 。

寝返り
睡眠中、わたしたちは20回以上も寝返りをうち、手足はそれ以上に動かしています。それは、からだの重みで押されている部分を重みから解放し、血の巡りを良くしたり、寝ていて暖まりすぎた場所に空気を送って冷やしたりするためです。健康な人ほど、からだをよく動かします。

発汗
睡眠中には、体温を調節するためにコップ一杯分もの汗をかきます。新陳代謝の激しい子供や、気温の高い日などはその量も当然多くなります。
眠りにつくと胸部などで増加し、次第に減って明け方には最も少なくなります。レム睡眠時には汗をかいています。

呼吸
入眠と共に呼吸数は減り、ノンレム睡眠時には穏やかになります。特に深い眠りのときは極端に少なくなります。一方、レム睡眠時の呼吸は速く、不規則になっています。

血圧
入眠後低下し、睡眠の後半から明け方にかけてどんどん上昇します。レム睡眠時の血圧は乱れています。

心拍数
睡眠が深くなるにつれて減少します。レム睡眠時には一時的に増加し、不規則になります。